西急にて帰省する

西急路線図 (クリックで拡大)
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はじめに

 みなさんは、東京から大阪へ向かう時、どの交通機関を使うだろうか。新幹線か飛行機、はたまた高速バスが一般的だろうか。東京に住んでいて、大阪に帰省する私は、普段は新幹線を使うことが多いが、気分によって色々変えている。よくやるのは、名古屋まで新幹線で乗って、名古屋から近鉄特急で帰るルートだ。

 しかし、この冬、帰省するにあたっては、違うルートで帰ることにした。東京から名古屋まで新幹線に乗り、名古屋からは西急の名神特急に乗るというルートだ。先述の通り、近鉄で帰ることは多かったが、西急で帰ったことは今まで無かった。今回、名古屋から大阪までの西急乗車録としてまとめたいと思った次第だ。

落ち着いた雰囲気の西急名古屋駅

 午前中に東京駅を出発する東海道新幹線のぞみ号に乗車し、名古屋駅に到着したのはお昼過ぎ。まずは腹ごしらえとして、新幹線口改札そばの食堂街で、台湾の名が付いた名古屋めしを堪能してから、西急名古屋駅へ向かった。

 西急名古屋駅は、JR名古屋駅でいう太閤口(新幹線)側にある。中央コンコースを通って桜通口側まで延々歩かないといけない近鉄と比べると、新幹線からの乗換は便利だ。ただ、賑やかなのは、街の中心側である桜通口側で、太閤口側は裏口感が否めない。

 

 西急名古屋駅を利用すること自体初めてだが、こちらも賑やかというより、落ち着いた印象を受ける。西急の名古屋口の普通電車は、基本的に地下鉄桜通線に直通して、西急名古屋駅のホームには入ってこない。また、特急や急行も30分に1本の運転であり、人の流れがあまりないことが原因だと思う。次々と列車がひっきりなしに入ってくる名鉄名古屋駅と比べると、あまりに対照的だ。

 

 ゆったりとした空気の流れるホームで待っていると、乗車する特急が入線して来た。西急10000系だ。列車に乗り込もうとした際、扉そばのマークが目に入った。特急車両にしか使われない、いわゆる両翼マークだ。普段、関西で一般列車に乗るときに見る片翼マークではないので、より一層、特別な車両に乗りこむんだという気になる。

大きな川と山を駆け抜ける東海圏

 車両に乗り込み、指定された車両右側の座席に座る。乗客を見ると、やはり私と同様、帰省客が多い。座席がほぼ埋まったところで定刻になると、そろりそろりと列車が動き出した。

 しばらく地下を走ったのち、地上に出てくる。近鉄名古屋線同様、名古屋市内は周りは住宅だらけだ。しかし、名古屋市を抜けてすぐの、津島市の神守駅あたりでは、もう車窓に田んぼがぽつぽつ見えてくる。青々とした空も見え、清々しさも感じるが、もう住宅街が途切れ出すとは、名古屋の影響圏はこんなに小さいのかと思ってしまう。しかし、並行する近鉄も、蟹江以西は同じように田んぼが点在するようになるし、名鉄沿線はより発展しているので、おそらく名古屋西側だけの現象だと思われる。

 

 佐屋を過ぎると、すぐに木曽三川と呼ばれる木曽川・長良川・揖斐川を渡る。近鉄と違い、長島を走る距離が短い分、一気に三本の川を渡るためか、やたら長いあいだ橋の上にいる感覚に陥る。ここで愛知県を脱し、三重県に入る。なお、近鉄の場合は木曽川が県境だが、西急は長良川が県境となる。ここ、テストに出ます。

 川を渡っている間、進行方向右手の車窓には、まるで壁のような養老山地が川に沿って横たわっているのが見える。関西にはなかなか大きな山がないため、いつも東海地方の山の高さには圧倒されっぱなしだ。

 

 下野代駅で養老鉄道と交差すると、養老山地の南端をかすめるように走る。台地上にある楚原駅で三岐鉄道北勢線と交差し、河岸段丘の段丘崖が織りなす景色を見下ろし、員弁川を渡り、再び段丘面を走るようになると、三里駅で今度は三岐鉄道三岐線と交差する。

どんどん段丘面を登るように高度を上げていき、石榑駅を通過すると、一気に山深くなり、すぐトンネルに入った。

 おそらく鈴鹿山脈を貫くトンネルに入ったのだろう。鈴鹿山脈は、濃尾平野と近江盆地を隔てる高く険しい山だ。西急の線路はこのトンネルの区間、およそ10kmの間で300mほど一気に高度を稼ぐ。ずっと片勾配で、鉄道としてもかなりきつい区間だ。このトンネルの中で、三重県から滋賀県に入っているはずだ。トンネルを抜けるまで、およそ10分弱だろうか。すごく長い時間のように感じた。

 

 トンネルを出ると、空はどんより曇っていて、ちらちら雪が降っていた。どうやらトンネルを超えるだけで、天気もガラッと変わるようだ。しかし、いまだ山を抜けてはおらず、車窓には深い渓谷の景色とトンネルが繰り返し展開する。

静かな永源寺駅と意外と乗降のある八日市駅

 そして、今まで快走してきた特急がだんだんとスピードを落とし始めると、猫の額のような山あいに田んぼと集落が見え、駅のホームに滑り込む。停車放送によると、最初の停車駅である永源寺駅のようだ。出発して40分ちょっとで、関西圏に入ったことになる。

 しかし、私の乗っている号車に乗り降りする動きはない。ホームを見ても、乗客はいないように見える。臨済宗の総本山である永源寺は、紅葉時にはたくさんの観光客でにぎわうと聞いているし、関西で、西急に乗ると、永源寺の広告をよく目にする。今日は静かだが、大晦日になると、また賑わうのだろう。

 

乗降客の少なさの割に、長めに停車したように思う。永源寺駅を出ると、一気に車窓が開けた。どんどん山が離れて、車窓に田んぼが広がっていく。愛知川の作った扇状地に出たのだ。つまり、近江盆地に入ったということになる。

 永源寺駅を出て10分ほど走っただろうか。車窓に田んぼではなく、密集した住宅街が見えるようになると、次の停車駅である八日市駅に停車した。何組かの家族連れや一人客が降りていく。名古屋から八日市までは、1時間もかかっていない。おそらく、名古屋からは、このルートが一番早いルートなのだろう。もしかしたら、私と同じように、東京から名古屋まで新幹線に乗り、名古屋で名神特急に乗り換えた帰省客もいたのかもしれない。そして、降車客と入れ替わり、八日市から乗車してきた客もいた。こちらは、個人客ばかりだった。おそらく、京都なり、大阪なりにこれから出掛けるのだろう。

一路近江路を快走する

 八日市駅を出発した特急は、駅間は田んぼの中を走り、住宅街に入ると駅を通過するというような光景を繰り返しながら、近江路を進んでいく。竜王駅を過ぎると、車窓には、名古屋で離れて以来の東海道新幹線の線路が見え、徐々に近づいてくるのが分かる。すぐそばまで近づくと、新幹線の線路と並走するようになる。

 野洲駅を通過する頃には、完全に住宅街の中を走るようになった。野洲町は京都都市圏に属している。西急の関西地区の急行電車も、2本に1本は野洲駅始発が仕立てられている。(残りは八日市始発)

 

 野洲川を渡り、栗東市、そして草津市に入る。草津市は湖東地域の街としては重要な街だが、名神特急は草津駅も颯爽と通過していく。琵琶湖の南端を回り込み、一転北上するようになって、大津駅に至るが、滋賀県の県都である大津駅も通過する。

 滋賀県をはじめとする沿線自治体から、草津駅や大津駅への名神特急停車要望がたびたび出されているようだが、いまだ実現はしていない。やはり、西急としては、都市間連絡の速達性を重視しているということだろう。個人的に、永源寺駅に停車させるのであれば、大津駅か草津駅も停車させてもいいのでは、と思わなくもない。

 ちなみに、ここまでの間、私の座っている席は琵琶湖のある側であったが、琵琶湖は一切見えなかった。多分、線路から離れているからだろう。

見慣れた京阪間は不覚にも……

 大津駅を通過したのち、トンネルを通過すると山科盆地。ここで、滋賀県から京都府となる。山科の街を通り抜けると、再びトンネルに入る。地下の五条大橋駅を減速しながら通過し、まもなく京都駅に到着した。

 ご存知の通り、西急の京都駅は、JRの京都駅と違い、烏丸五条にある。ここまで来れば、個人的にはだいぶ帰ってきた感じがある。

 京都駅では、車内の3~4割の乗客が降りた。名古屋から1時間20分ほどかかるが、新幹線だと40分弱で着いてしまう。時間差はあるが、料金差も西急が有利であり、名神特急が一定数選ばれているということなのだろう。

 また、京都駅からも、ある程度の人数が乗り込んできた。大阪や神戸へ向かう場合にも、特急が利用されているようだ。

 

 京都駅を発車した特急は、京都市内を地下で一路西に進んだ後、西京極付近で地上に出てくる。不覚にも、ちょうどこの辺りで寝てしまった。京都からはよく乗る区間でもあり、目新しさがなかったからなのかもしれない。気が付いたら、淡路を通り過ぎ、淀川の鉄橋を渡っていた。滋賀県では雪さえ降っていたが、ここまで来ると、空は晴れ渡っている。

 

 淀川越しに、梅田のビル群が見える。いつの間にか梅田も、摩天楼という名にふさわしいほどのビル群になったと思う。じきに地下に入り、天神橋駅を通過する頃には、梅田到着のアナウンスが流れてきて、ほどなく梅田駅に停車した。名古屋から2時間弱。時計は午後3時前を差していた。未乗車区間も多く、あっという間に時間が過ぎた。(途中から寝ていたせいもあると思うが)

さいごに

 今回初めて名古屋から大阪まで西急に乗ってみたが、普段よく乗る近鉄と比べてみて思ったのは、西急は東海圏において、関西の私鉄感がさらに醸し出されている気がする。おそらく、東海圏を走る距離が短く、関西圏を長る距離が長いからだろう。近鉄以上に東海圏の私鉄という感じはしない。

 そして、東海圏の大多数の人にとっては、西急は、京都・大阪・神戸の関西三都へ向かう私鉄として認識されているのだと思う。三重県に行くのは近鉄で、ピンポイントに大阪に行くのも近鉄だが、関西三都だと西急という認識なのだろうと感じた。

 

 今回は名神特急に乗車してみたが、今度は機会があれば、急行電車で名阪間を乗り通してみたいと考えている。